ますとブログ

病名?それとも状態?言語聴覚士が教える「吃音症」と「吃様症状(どもり)」の違い

2026年10月27日 15:19


こんにちは。

日常会話の中で「言葉が詰まる」「最初の音を繰り返す」といった状態を、私たちはよく「どもり」や「吃音」という言葉で一括りに表現しがちです。

しかし、医療やリハビリの専門的な現場において、これらは「吃音症(きつおんしょう)」という疾患名と、「吃様症状(きつようしょうじょう)」という症状・状態を表す言葉に明確に区別されています。

今回は、一般の方が日常的に「どもり」と呼んでいる現象の正体について、医学的な定義に基づき、言語聴覚士(ST)の視点から誠実かつ分かりやすく解説します。


1. 「吃音症」と「吃様症状」の医学的な違い


まずは、それぞれの言葉の定義を正確に整理しましょう。

• 吃音症(疾患名):

脳の言語処理や運動コントロールに関わる神経ネットワークのわずかな働きのバランス、あるいは発達的・体質的な要因によって、幼少期から継続的に発話の流暢性が障害される「疾患としての診断名」です。

• 吃様症状(状態・症状を表す言葉):

言葉を繰り返す(連発)、引き伸ばす(伸発)、詰まって出ない(ブロック)といった、「どもるような話し方の特徴・非流暢な状態そのもの」を指す専門用語です。

日常で使われる「どもり」という言葉は、この2つの意味が混ざり合って使われていることが多くあります。


2. 世間一般で言われる「どもり」のリアルな実態


「一般の人がどもりと言っているものの多くは、疾患としての吃音症だけでなく、吃様症状(どもるような状態)を一括りにしたものでは?」という疑問を持たれることがありますが、これは臨床的・社会的な視点から見て非常に的を射た正しい着眼点です。

なぜなら、医学的な診断としての「吃音症(体質)」を持っていなくても、人間は以下のような状況で一時的に「吃様症状(どもるような話し方)」を引き起こすことがあるからです。

• 人前で発表するときの、極度の緊張やパニック

• マルチタスクや時間的なプレッシャーによる、激しい焦り

• 過度な肉性的・精神的疲労による、一時的な注意・処理能力の低下

つまり、社会一般で「あの人、今焦ってどもっているな」と認知されている現象の多くには、体質的な吃音症によるものだけでなく、環境や心理的な要因によって一時的に引き起こされた「吃様(どもるような)症状・言い淀み」も少なからず含まれているのがリアルな実態なのです。


3. 鍼灸・手技療法が果たす「身体のコンディショニング」という役割


医療的な事実として正確にお伝えしなければならないのは、「鍼灸や手技療法が、吃音症の根本原因(脳の特性)や、一時的な精神的動揺そのものを直接的に治療・解決するという臨床エビデンスはない」という点です。吃音に対する基本かつ確実なアプローチは、医療機関や教育機関での専門的な言語リハビリテーションや環境調整(標準医療)です。

しかし、その原因が体質的な「吃音症」であれ、一時的なストレスや焦りによる「吃様症状」であれ、言葉を出そうとする瞬間に「自律神経の働きなどが影響し、喉頭(喉仏)周辺や首・肩の筋肉が物理的に力んでしまう(過緊張)」という身体の反応は共通しています。

当院では、言語聴覚士としての解剖学的な知見をベースに、安心・安全を最優先にした心身のコンディショニングを行っています。

• 首・肩・顎まわりの過緊張の緩和(手技療法):

発話時の努力や緊張によって慢性的に凝り固まりやすい首の前側の筋肉(胸鎖乳突筋など)をやさしく触圧・ストレッチし、喉まわりが本来の滑らかな動きを発揮しやすい環境を整えます。

• 深部の筋肉へのアプローチとリラックス(鍼治療):

プレッシャーがかかったときに高ぶってしまいやすい交感神経の興奮を落ち着かせるための適切な鍼刺激(パルス治療など)を行い、身体側からリラックスの信号を送るサポート(ボトムアップ)をします。


4. まとめ:専門医療を主軸に、話しやすい身体のベースを整える


「言葉がうまく出ない」「喉が詰まる」という現象の背景には、本人の性格やメンタルの弱さではなく、身体の筋肉がプレッシャーに対して過剰に応答してしまっている状態(過緊張)があります。

専門医療機関での言語リハビリや学校でのサポートを主軸としつつ、「話すときの身体的な力みや疲労を物理的に解きほぐし、少しでも楽な状態で発声できる身体の土台を整える」ための補完的なケアとして、当院の安全に配慮した施術をぜひ選択肢に入れてみてください。